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東大体操部部員日記

東大体操部の部員による日記です。

補助の極意

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こんにちは、四年の中津川です。梅雨が明けて、凄まじく暑い日々が続いていますね。今日の東京は正に前代未聞の常軌を逸した暑さで、体育館にたどり着くまでにシャツが絞れるくらいに汗だくになり、練習中にはたびたび意識が朦朧としてしまいました。三年のたつるも、あん馬の旋回中に自分が旋回をしているのかシンピをしているのかが、あまりの暑さでわからなくなっているようでした。熱中症には十分気を付けて、水分補給と適度な休息をとりましょう。こうも暑いと、集中力がかけてしまいいつもは問題ない技でも怪我をしてしまいそうなので気をつけたいところです。
怪我を防ぐために重要なのが補助。最近、鉄棒で危ない落ち方をしている人が多く出ていることもあり、今日の練習後に福田コーチが補助の仕方を部員に教えてくださいました。お忙しい中、お時間をとって教えてくださってありがとうございます!忘れないうちに記録しておくために、今日の部員日記では福田さんから教わった補助の仕方を説明したいと思います。

Ⅰ.一般論

補助の鉄則
①補助者は、選手の腹と背中に手を添えて勢いを殺す。
②落下地点を見極め、速やかに選手の横に移動する。

まず①ですが、直立している人間の重心の位置は腰のあたりなので、その近くを抑えるのが並進運動だけでなく回転運動も抑えることができて制御しやすいと思われます。(ただし、姿勢によって重心の位置は変わります。たとえば、バク転の反り返った姿勢のときの重心は身体の外にあります。)
補助者自身も、支えるときに重心を落とすと安定感が増します。特に、自分より背が低い人を補助する場合には、補助者が姿勢をより低くするのも技術のひとつです。

次に②ですが、福田さん曰く野球のフライの捕球と同じ、だそうです。野球では、バッターがボールを打った瞬間に野手はボールの落下地点を予測し、速やかに落下地点まで移動してから自分の取りやすい(あるいは送球しやすい)姿勢で捕球しますが、体操では、選手が空中に飛び出た瞬間に落下地点を予測し、そこに速やかに全身で移動して選手を摑まえます。手だけ伸ばして支えにいくのではなく、足も使って落下地点まで全身で移動しなければなりません。これが意外と難しいところで、わかっていてもどうしても、手だけで支えにいきがちです。
あと、支えるべき位置である腰だけに着目すれば、単純な技では落下地点が予測しやすい(重心はおおよそ放物運動する?)と思われますので、補助の練習の際にはまず腰あるいは腹のあたりに意識を集中してみるとよいと思います。

では、これらの鉄則を踏まえた上で、補助を必要とすることが多い技についてひとつひとつの注意すべき点を見ていきましょう。

Ⅱ.各論

①とび前転
選手から見て右側に補助者が立つとします。
体操初心者が前宙の前段階として練習することが多い基礎的な技ですが、両手で勢いを受け止めながら前転につなげるときに、頭からマットに突き刺さってしまうのが一番ありがちでかつ避けたい事態です。選手が空中で半回転したところで補助者は右手で背中を左手で腹を抑えて、両手でしっかりと持ち続けながら勢いを殺して前転まで繋げます。

②前宙
選手から見て右側に補助者が立つとします。
ミニトランポリンで軽く跳ねてから前宙する練習を例としましょう。選手が軽く跳ねてから、飛び出す瞬間に左手を逆手で腹に添えます。左手で高さをキープしながら選手と一緒に移動し、着地時に右手を左手の下を通って背中に添えます。最終的には、補助者の両手がクロスして選手を支える形になります。補助者の左手が選手の腕の振り下ろしの邪魔にならないように気をつけましょう。

③スタン宙(ある程度できる人)
選手から見て左側に補助者が立つとします。
右手を選手の腰のあたりに当て、引き上げをしっかり支えます。選手が空中で回転したら素早く手を離して右手で背中を左手で腹を押さえて着地の補助をします。

④スタン宙(練習し始めの人)
選手から見て左側に補助者が立つとします。
右手で選手のズボンを持ち、引き上げから着地まで持ち続けます。着地の際には左手でお腹を押さえますが、あくまでメインは右手。バスケ用語で言うところの、「左手は添えるだけ」です。
もし危ない落ち方をしても、ズボンをがっちりと持っていれば頭から落ちることはありません。

⑤鉄棒やつり輪の宙下り
選手から見て左側に補助者が立つとします。
選手が鉄棒やつり輪を離したあと高い位置で宙返りするのを補助するのは困難なので、着地の時にしっかりと補助します。基本的には、右手で背中を左手で腹を抑えて、両手で回転の勢いを殺しながら着地させます。
特に鉄棒では、着地地点が毎回大きく変わり得るので、普段、危なくないときでも毎回着地地点まで移動する癖をつけることがとても大事となります。
先日、三年の大野が車輪宙で回りすぎて背中から落ちてしまったとき、補助者だった私は油断していたわけではなく危ない落ち方をするかもしれないという心構えをしていたにもかかわらず、右手だけ伸ばして大野の背中の下に入れるのが精いっぱいで、ほとんど勢いを抑えられなかったため、危うく大怪我に繋がってしまうところでした。普段から、着地地点のすぐ横まで全身で移動するのを習慣化していないと、とっさのときにはなかなか鉄則通り動けないものです。この一件は、本当に反省すべき事故でした。
危ない落ち方をしたときは、背中側からのときは右手で、腹側からのときは左手で、補助者は選手を抱きかかえるようにしてとにかく勢いを少しでも少なくするのが最善とのことです。そうは言っても実際には、体重60kg以上の人間が2m以上の高さから落ちてくるのを受け止めることになるので、福田さんでもかなり恐怖を感じるとおっしゃっていて、補助者には事前に相応の覚悟が必要になります。

⑥ゆかの二回宙
鉄棒の宙返りの補助と同じく、空中で回転を補助するのは困難なので、着地時に両手で腹と背中を押さえて補助します。熟練した補助者だと、たとえばゆかのロンバク後方ダブルの場合、ロンダートバク転のあたりから引き上げまで補助して、最後に着地も補助する、というように選手に合わせて高速で移動するそうです。

以上が、本日の補助講座で福田さんから教わった内容です。体操は空中を舞うスポーツである以上、危ない落ち方をしてしまう可能性はゼロにはできませんが、基礎から段階を踏んで練習していくことと、補助をしっかりとつけることで、危険は最小限に減らせると思います。大人気体操漫画の『ガンバ!Fly high』で"伝説の補助師"大沼重昭さんが言ってました。「どんな一流の選手でも、信頼できる補助がいなければ、安心して練習など出来ない!体操は一人でやってるんじゃない!一流選手の陰に一流の補助がいる…」

今回教わった内容はぜひ、後世にも伝えていきましょう。合宿について全く触れてないので、次に部員日記を書く人は合宿の振り返りをお願いします。皆さん、お読みくださってどうもありがとうございました。

中津川